2008年の広島カープの総括を行います。1年間通しての先発・中継ぎ・抑えと投手部門の総括です。
先発
1.エースの活躍
昨年まで不動のエースだった黒田が抜けて大黒柱がいない中、ルイスの活躍は黒田の抜けた穴を埋めるには十分だった。15勝8敗で終えたが、これはカープの外国人投手ではチェコ、ミンチーと並ぶ最高の勝利数である。 しかも、7月上旬から1ヶ月半戦線離脱しての結果なので、怪我がなければ17、18勝はいけただろう。来年の残留もほぼ決定的なので来年もチームの柱となるのは間違いない。
黒田の代わりに柱となる予定だったのが大竹である。しかし大竹は毎年のことだがここぞというときに抑えきれない、勝負弱さを露呈してしまって6月終わりまでで2勝9敗ではエースとは言えない。ただこの9敗の中には かなり接戦で落としている試合も多いのも事実なのでもう一皮剥けてくると勝ちと負けが逆転してもおかしくないぐらいのポテンシャルはあると思う。
しかし1年間怪我もなくきちんとローテーションを守ったことは評価できる。先発では大竹だけなので、同じ9勝を挙げた前田健(2敗)のほうが勝率は圧倒的にいいが、1年間で考えると大竹の9勝のほうが価値がある。 強いて言うなら10勝してほしかった。来年はルイスに負けないぐらいの投球を期待したい。
2.若手の台頭
この一年、特に後半戦で成長したのは、前田健(20歳)、篠田(23歳)、斉藤(21歳)の若い3人である。前田健は後半戦は4連勝などを含む7勝1敗と安定した投球が光った。3人の中では1番の成長株と位置づけできる。 今年のような安定感があると来年は二桁は十分可能だ。次に篠田。今年ドラフト1巡目での入団で期待されていたが、前半戦はコントロールが悪く、ストライクが入らないといった場面もあったが、後半戦はコントロール 重視でストライクが入りだすとまずまずの内容の試合が増えていった。防御率が他の2人と比べて1点高いのでそこが課題か。来年は相手に点を与えない投球を見せてほしい。そして斉藤。8月30日中日戦が今季初登板で 3勝1敗とまずまず。若さが出る場面もあったがまだまだ21歳でこれからの選手なので今季は合格点と言えるだろう。
名前 |
勝敗 |
防御率 |
前田健 |
9勝2敗 |
3.20 |
篠田 |
3勝4敗 |
4.31 |
斉藤 |
3勝1敗 |
3.34 |
合計 |
15勝7敗 |
3.57 |
この3人で貯金を8つ作っていることを考えると、今季終盤のクライマックスシリーズ争いがギリギリまでもつれた原動力になりえたといってもよい。
3.ベテランの味
ベテラン高橋健の存在も大きかった。特に前半戦はルイスと並んでチームを引っ張った。オールスターでファン投票1位で選出されたのはその証拠といえよう。後半戦は故障もあり8勝に留まったが、来年40歳のベテランの 投球力は若手のいい手本になっただろう。
4.来年に賭ける
先発陣の中できつく言うなら失格というべきなのは、長谷川と宮崎。長谷川は調子の波が激しく、抑えるときは抑えるが、打たれ始めると簡単に失点してしまう。3勝6敗防御率6.94では2軍行きも致し方ない。宮崎も同様で 1勝6敗防御率6.89と不本意な成績である。長谷川はローテーションに入り二桁勝つ力は十分にあるので来年は何とかがんばってほしい。
5.先発陣の責任
≪主な先発投手の成績≫
広島
名前 |
勝敗 |
防御率 |
採点 |
ルイス |
15勝8敗 |
2.68 |
◎ |
大竹 |
9勝13敗 |
3.84 |
△ |
前田健 |
9勝2敗 |
3.20 |
○ |
高橋健 |
8勝5敗 |
3.50 |
○ |
篠田 |
3勝4敗 |
4.31 |
△ |
斉藤 |
3勝1敗 |
3.34 |
○ |
長谷川 |
3勝6敗 |
6.94 |
× |
宮崎 |
1勝6敗 |
6.89 |
× |
青木高 |
0勝3敗 |
4.72 |
△ |
合計 |
51勝48敗 |
3.93 |
巨人
名前 |
勝敗 |
防御率 |
採点 |
グライ |
17勝9敗 |
3.06 |
|
内海 |
12勝8敗 |
2.73 |
|
高橋尚 |
8勝5敗 |
4.13 |
|
上原 |
6勝5敗 |
3.81 |
|
木佐貫 |
6勝5敗 |
4.14 |
|
バーン |
5勝3敗 |
3.48 |
|
合計 |
54勝35敗 |
3.39 |
阪神
名前 |
勝敗 |
防御率 |
採点 |
安藤 |
13勝9敗 |
3.20 |
|
下柳 |
11勝6敗 |
2.99 |
|
岩田 |
10勝10敗 |
3.28 |
|
アッチ |
7勝6敗 |
3.70 |
|
上園 |
4勝0敗 |
3.14 |
|
福原 |
3勝2敗 |
3.44 |
|
杉山 |
2勝3敗 |
5.82 |
|
金村 |
0勝5敗 |
4.14 |
|
|
|
|
|
合計 |
50勝36敗 |
3.45 |
|
中日
名前 |
勝敗 |
防御率 |
採点 |
山本昌 |
11勝7敗 |
3.16 |
|
吉見 |
10勝3敗 |
3.23 |
|
川上 |
9勝5敗 |
2.30 |
|
小笠原 |
8勝11敗 |
4.70 |
|
チェン |
7勝6敗 |
2.90 |
|
中田 |
7勝9敗 |
4.65 |
|
朝倉 |
3勝4敗 |
3.36 |
|
清水 |
2勝2敗 |
2.45 |
|
川井 |
1勝5敗 |
3.97 |
|
合計 |
58勝52敗 |
3.50 |
※青木高は先発・中継ぎを掛け持ちでやっていたので、一概には評価しにくい・・・。
※他球団の選手は詳しくないのでこの中で中継ぎに回って勝敗に影響があった投手もいるかもしれないが、あくまで目安ということで考えてもらえればと思う。
上記のカープ先発陣の採点は成績だけで評価したものであり、その他の採点要素はあるだろうがおそらく大抵の人の判断と相違ないだろう。他チームとの比較だが、勝敗の数は一概には判断できないので防御率で判断してほしい。 3.93は明らかに他の3球団と比べて大きい。今年は中継ぎ・抑えの頑張りが大きかったので最後まで3位争いができたが、来年も同じようにいくとは限らない。今季3位を争った中日でさえ防御率3.50である。山本昌は頑張ったが、 中田・朝倉あたりは調子が悪かったと言ってよい、にも関わらず3.50である。来年はクライマックスシリーズ進出を目指すには(最終的には優勝を目指しているだろうが・・)、先発陣の防御率は最低でも3位以内には入る必要があるだろう。
中継ぎ
1.セットアッパー
今年クライマックスシリーズ進出を最後まで争えたのは、中継ぎ・抑えに働きが一番大きかったと思う。梅津はチーム最多の64試合に登板で防御率2.62は立派な成績である。中継ぎエースの横山が離脱してからも永川につなぐ セットアッパーの役割を十分に果たした。そして横山はシーズン途中で離脱したが、5勝1敗防御率1.50は文句のつけようのない数字である。横山がフルにシーズンを戦っていれば、上野・岸本あたりももう少し楽に投げれただろう。
2.外国人トリオ
新外国人コズロースキー・シュルツ・ブラウワーの中ではやはりシュルツが一番よかった。開幕に出遅れたが、55試合に登板し梅津と同様に永川までのつなぎ役に貢献した。ただ7月だけで4敗を喫したのが痛かった。 150kmを超える直球があるので、あとは縦に落ちる変化球が投げれれば来年はさらに活躍の場が与えられると思う。
コズロースキー・ブラウワーは正直物足りなかった。他より特に優れているといったものがあまりなかったように思える。来年の契約は厳しいか?
≪主な中継陣成績≫
広島(2007年)
名前 |
登板 |
勝敗 |
H |
HP |
防御率 |
採点 |
梅津 |
47 |
2勝3敗 |
21 |
23 |
5.28 |
△ |
横山 |
60 |
3勝3敗 |
15 |
18 |
2.63 |
◎ |
上野 |
31 |
1勝1敗 |
7 |
8 |
4.50 |
△ |
青木勇 |
43 |
1勝1敗 |
15 |
16 |
3.00 |
○ |
林 |
57 |
3勝2敗 |
16 |
19 |
3.54 |
○ |
広池 |
32 |
2勝2敗 |
7 |
9 |
6.26 |
× |
合計 |
270 |
12勝12敗 |
81 |
93 |
3.90 |
広島(2008年)
名前 |
登板 |
勝敗 |
H |
HP |
防御率 |
採点 |
梅津 |
64 |
0勝3敗 |
21 |
21 |
2.62 |
◎ |
横山 |
38 |
5勝1敗 |
16 |
21 |
1.50 |
◎ |
上野 |
42 |
2勝2敗 |
8 |
10 |
4.81 |
△ |
岸本 |
37 |
2勝2敗 |
4 |
6 |
5.35 |
× |
林 |
17 |
0勝0敗 |
3 |
3 |
4.50 |
△ |
コズロー |
26 |
2勝1敗 |
6 |
6 |
4.74 |
△ |
シュルツ |
55 |
3勝4敗 |
18 |
21 |
3.23 |
○ |
ブラウワ |
21 |
0勝2敗 |
12 |
12 |
3.98 |
○ |
合計 |
300 |
14勝15敗 |
88 |
100 |
3.68 |
※H:ホールド HP :ホールドポイント=救援勝利+ホールド
※この中で先発に回った投手もいるので純粋に中継ぎのみの成績ではないが、参考程度に考えてもらえればと思う。
抑え
1.頼れるクローザー
今シーズンカープのMVPを挙げるとすると、永川だと言う人は少なくないだろう。球団新記録の38セーブを挙げ、救援失敗は1度だけ。2006年、2007年と比較すると負けが圧倒的に少なくなり、首脳陣の信頼が厚くなるのもうなづける。 今年の成長している点はフォークボールでカウントがとれるところにあると思う。ワンバウンドで空振りをとるフォークとストライクゾーンに投げるフォークをうまく使い分けている。そしてストレートの兼ね合いも今シーズンはとても いい。特にシーズン終盤には、球種がストレートとフォークの2種類しかないので、追い込まれるとバッターはフォークを待つが、そこにストレートをズバッ!と投げ空振りをとれる。もちろん石原のリードも大きい。またツースリーから フォークボールが来ると相手が分かっていてもフォークボールを連投する永川の度胸にも本当に恐れ入る。
監督も、中継ぎも永川につなげば抑えてくれるという信頼が今シーズンは特に強かったと思う。
≪永川の年度別成績≫
広島
年 |
登板 |
勝敗 |
セーブ |
防御率 |
採点 |
2003年 |
40 |
3勝3敗 |
25 |
3.89 |
○ |
2004年 |
22 |
3勝4敗 |
4 |
7.99 |
× |
2005年 |
57 |
3勝5敗 |
2 |
3.13 |
△ |
2006年 |
65 |
5勝6敗 |
27 |
1.66 |
○ |
2007年 |
61 |
4勝7敗 |
31 |
3.06 |
△ |
2008年 |
56 |
4勝1敗 |
38 |
1.77 |
◎ |
合計 |
301 |
22勝26敗 |
127 |
3.93 |