2008年の広島カープの助っ人外国人は7人(1軍出場経験有り)だった。その中でもルイスの年俸は9,500万と1年目としては破格の金額であるが、その期待に答える活躍であった。 来年は1億4,300万(出来高を合わせると2億近い)とカープ外国人では史上最高の金額となっていて球団のさらなる期待が伺える。ただ本当に来年この年俸に見合う活躍はできるのだろうか?
カープ歴代外国人最多勝との比較
今シーズンはチームの大黒柱として活躍。15勝8敗防御率2.68。奪三振(183個)のタイトル獲得。与四死球率1.67/被本塁打率0.61/被安打率7.63。完投3、完封2。エースと呼ぶには申し分ない成績である。
ただ来年も今年と同じような成績が残せるだろうか?
相手チームからも研究され、そう簡単に三球三振とはいかなくなるだろうし、そうなれば球数も増え、中4日でどんどん投げるというのは難しくなる。
今季最終登板で4回8失点KOのように打ち込まれる試合も増えてくることも考えられる。
そして筆者が一番懸念していることはカープの外国人投手の中で2年連続活躍(15勝程度勝っている)したピッチャーが過去にいないというところである。
≪ルイス≫
年 |
試合 |
勝利 |
敗北 |
防御率 |
奪三振率 |
与四死球率 |
被本塁打率 |
被安打率 |
完投 |
完封 |
2008年 |
26 |
15 |
8 |
2.68 |
9.25 |
1.67 |
0.61 |
7.63 |
3 |
2 |
≪チェコ≫
年 |
試合 |
勝利 |
敗北 |
防御率 |
奪三振率 |
与四死球率 |
被本塁打率 |
被安打率 |
完投 |
完封 |
1995年 |
28 |
15 |
8 |
2.74 |
7.71 |
4.60 |
1.16 |
6.64 |
10 |
3 |
1996年 |
9 |
4 |
1 |
4.80 |
6.40 |
4.26 |
1.78 |
9.24 |
3 |
1 |
≪ミンチー≫
年 |
試合 |
勝利 |
敗北 |
防御率 |
奪三振率 |
与四死球率 |
被本塁打率 |
被安打率 |
完投 |
完封 |
1998年 |
35 |
15 |
11 |
2.75 |
4.69 |
2.44 |
0.72 |
9.19 |
6 |
2 |
1999年 |
17 |
2 |
9 |
5.77 |
4.25 |
3.27 |
1.09 |
11.43 |
0 |
0 |
2000年 |
31 |
12 |
10 |
3.49 |
4.77 |
2.70 |
0.98 |
9.98 |
0 |
0 |
過去カープの外国人投手の最多勝利数(共に15勝)を挙げているチェコとミンチーとを比較してみる。
チェコ・ミンチー共に1年目はルイスと遜色ない活躍をしている。チェコは荒れ玉なので与四死球率が高く、ミンチーは打たせて取るタイプなので奪三振率が低く被安打率が高い傾向にある。 そういう意味ではルイスが一番まとまっていると言えるが、これは三者三様の特徴なのでほぼ同じ活躍をしていると考えてよい。ルイスの完投が少ないのは分業制の時代の流れなので気にしない。
しかし2年目はチェコ・ミンチーともに1年目の数字よりも圧倒的に悪い。
ミンチーは3年目復活しているが1年目に比べると劣る。チェコは球団と揉め、翌年レッドソックス入りが決まっていたのでモチベーションが落ちていたという側面はあるが・・・。
やはり外国人先発投手が2年連続活躍するのはなかなか厳しいものがあると思う。
他球団の選手との比較
他球団の外国人投手を見てもここ数年で2年連続先発投手が活躍したのは、去年と今年のグライシンガーぐらいではないだろうか。
しかも日本人選手に限っても過去10年で2年連続で15勝以上した投手は上原(巨人2002-2003)、斉藤(ソフトバンク2005-2006)、岩隈(近鉄2003-2004)、ダルビッシュ(日本ハム2007-2008)の4人しかいないのである (松坂、川上、井川、黒田などそれに劣らない成績を収めた投手はいるが、ここでは2年連続ということにこだわってみたい)。
この現状を踏まえるとルイスが来年15勝以上(若しくはそれに相応しい活躍が)できるかと問われたときに、疑問の声が上がってしまいそうだ。
2つの条件
しかし筆者の考えでは来年ルイスがある2つの条件をクリアした場合は今年と同程度は活躍できるのではないかと考えている。
≪グライシンガー≫
年 |
試合 |
勝利 |
敗北 |
防御率 |
奪三振率 |
与四死球率 |
被本塁打率 |
被安打率 |
完投 |
完封 |
2007年 |
30 |
16 |
8 |
2.84 |
6.85 |
1.51 |
0.60 |
7.97 |
3 |
2 |
2008年 |
31 |
17 |
9 |
3.06 |
7.30 |
1.75 |
0.87 |
8.78 |
0 |
0 |
このグライシンガーの2年間の成績はルイスの2008年と非常に似ている。外国人投手が複数年日本のプロ野球で活躍するには、制球力が一番大事であると思う。日本の打者はボールをよく見るのでコントロールが悪いとすぐに四球になる。 大リーグのように初球からどんどん振ってくる打者は日本にはあまりいない。
すなわち直球の速さや球種の多さよりもあまり四死球を出さない制球力のいい投手が日本では成功しているのではないだろうか。
グライシンガーぐらいコントロールがよくないと、日本のプロ野球には通用しないと言ってもよい。
名前 |
年 |
勝利 |
敗北 |
防御率 |
与四死球率 |
上原 |
2002年 |
17 |
5 |
2.60 |
1.28 |
2003年 |
16 |
5 |
3.17 |
1.22 |
|
斉藤 |
2005年 |
16 |
1 |
2.92 |
2.92 |
2006年 |
18 |
5 |
1.75 |
2.42 |
|
岩隈 |
2003年 |
15 |
10 |
3.45 |
2.35 |
2004年 |
15 |
2 |
3.01 |
2.16 |
|
ダル |
2007年 |
15 |
5 |
1.82 |
2.69 |
2008年 |
16 |
4 |
1.88 |
2.38 |
この表は先ほどの2年連続15勝以上の投手の与四死球率である。この中では上原が断トツでコントロールがいいことが分かる。しかしその他の投手も決して悪くなく3.00以上の投手はいない。やはり3.00がひとつのラインだろう。 コントロールに定評のあるミンチーでさえ2年目は3.27である。
外国人投手が日本で活躍できる目安としては与四死球率が3.00以下であると考える(これは日本人にも言えることだと思うが)。
特に制球力のいいルイスは2.50を目標においてもいいと思う。
もうひとつ条件は、1年間ローテーションを守ること(今年は1ヶ月半離脱した)。怪我をせずローテーションを守るということは先発投手にはとても重要なことであり、今年のカープでは大竹しか1年間ローテーションを守れなかった。 1年間ローテーションを守ればギリギリだが30試合は先発可能だ。今年のルイスがローテーションを守っていたとすると32~33試合の登板は可能だったはず。
「与四死球率2.50以下と30試合先発登板」
この2つがクリアできればルイスの力を持ってすればおのずと15勝は勝てるのではないだろうか(※これは2009年が終わった段階で検証してみたいと思う)。
最後にもうひとつ。エースと呼ばれる為には10敗はしてほしくない。いくら20勝しても10敗してしまえばエースとは言えない。負けないこともエースの条件に入ると思う。